リスク尺度:バリュー・アット・リスクについて
概要
バリュー・アット・リスク(VaR:Value at Risk)とはリスク尺度の一つで、現時点で所有している金融資産を一定期間保有し続けたとしたときにリスクファクターによって確率的にどれだけの損失を被るかを統計的なデータをもとに計測したものである。
例えば、あるポートフォリオにおいて保有期間を1か月とし、信頼係数99%の信頼区間としてVaRを計算すると保有期間中にそのポートフォリオの損失額がVaRを越える確率は1%となる。
VaRは1988年のバーゼル合意以降欧米で使われ始め、1993年に発表された第2次BIS規制案において金融機関の市場リスク管理法として採用が推奨されたのをきっかけに日本でも急速に普及した。しかし今ではVaRに対する様々な批判(後述)があり、あまり使われていない。
VaRの性質
- 潜在的損失を直感的に反映している。
- 損失のみに焦点を当てているので、密度関数の左裾のみに依存し利益は考慮されない。
- 確率に要約されるという意味で客観的である。
VaRの計算
VaRの計算方法は以下の3つがあげられる。
- モデリングして計算
- 離散分布に対する簡便法
- 市場リスクに対する経験的アプローチ
正規分布に対するVaR
Xが平均μ、標準偏差σをもつ正規分布に従うと仮定するとそのときのVaRは以下のようになる。
VaRに対する批判
分散化の失敗
VaRには劣加法性がある。これによりリスク分散化されたポートフォリオはリスク分散されていないポートフォリオよりも有利であるのにもかかわらず、VaRはこの有利さを反映しない可能性がある。
リスク評価の甘さ
VaRよりもかなり大きな損失が出てしまうことが起こりうる。これはVaRはhの確率で起こる最小損失を示すがhの確率でどれほど大きい損失が出るかについては何も言っていないからである。
参考文献
- 作者: デービッド・G.ルーエンバーガー,今野浩,鈴木賢一,枇々木規雄
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2015/03/26
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