理想的なリスク尺度とは?
バリュー・アット・リスクはリスク尺度として多少は機能するが、不十分な点が多くあった。ならば理想的なリスク尺度とはいったいどのようなものだろうか?1997年に発表されたArtzerらの『Thinking Coherently』という論文の中でリスク尺度が満足すべき公理が提示された。
コヒーレント・リスク
リスク尺度(risk measure)とはある時点でのポジションを確率変数Xとしたときに、Xを実数にマッピングする写像のことをいう。つまり、リスク尺度をρとするとその尺度の下でのリスクはρ(X)となる。ρ(X)≦0ならば、ポジションXを受け入れても損失は起こらないのでXを許容できると考える。
以下の4つの公理を満たすようなリスク尺度をコヒーレント(coherent)であるという。
- 平行移動不変性(Translation Invariance) すべてのXと無リスク資本の収益Cに対して、が成り立つ。
- 劣加法性(Subadditivity) すべてのに対して、が成り立つ。
- 正の同次性(Positive Homogeneity) すべてのおよびすべてのXに対して、が成り立つ。
- 単調性(Monotonicity) であるすべてのに対して、が成り立つ。